異星人の郷

中世ドイツの村に墜落した異星人と村人とのと、彼らの存在を現代から解き明かしていく学者たち。久々に心引かれる設定で読み始めたが、期待以上の素晴らしい読後感だった。 構成的にはほとんどが中世編で、村人の生活や世界情勢が丹念に描かれる。ちょっとキ…

ベガーズ・イン・スペイン

“ベガーズ”って何のことだろうと思ったら、乞食(beggar)のことだったのね。カタカナで書かれるとなんか高尚な言葉にみえてしまう。そういえばニュージーランドでは、誰かに向かって悪態をつくとき「バガ!」と言ってたけど、あれも beggar の音変化だった…

超弦領域

2008年日本SF傑作選。別に酔ってるわけでもないが、書きたいことをかいちゃおう。 『ノックス・マシン』ミステリの事に通じてなくても、まっとうに面白かった。観慣れた/読みなれたタイムトラベルネタでも、ちゃんと説得力のある文章を書ける人の手にかかる…

ユダヤ警官同盟

読み始め106ページ。いいねコレ。 イスラエルが成立しなかった世界の、架空のアメリカ領内ユダヤ人自治都市が舞台。自治権放棄2ヶ月前という設定で、なにやら祝祭的な盛り上がりかたをしそうな雰囲気がでてきた(さてどうか)。 文学臭い、つうか過剰にファ…

時間封鎖

読了はずいぶん前だけれど、書いておこう。ロバート・チャールズ・ウィルスンのSF。ヒューゴー賞受賞。時間の流れの速い惑星に行く物語はむかしからあるけれど、これはその逆バージョン。とてもよいSFだった。テレビで言えば、スタートレック:ヴォイジャー…

虚構機関

2007年日本SF傑作選。少々酔ってるんで、勢いで書きたいこと書いちゃおう。 『グラスハートが割れないように』小川一水。疑似科学批判。作者の別作品でも思ったが、女性の造形がなんだかテレビドラマじみてる。小説なのになぜ演劇をやらせるんだろう。『7パ…

TAP, プランク・ゼロ

イーガンの短編集『TAP』は、やっぱり最後に収録された表題作がいちばん読み応えがあった。母と子の対話を絡めてくるところがウェットでいい感じ。地味でドライな探偵モノ(まあ多少はアクションもありますが)のスタイルは、良質なテレビシリーズの1エピソ…

TAP

バクスターの『プランク・ゼロ』を読みつつ、新幹線に乗る前に買ったイーガンの『TAP』も正月中に消化しちゃおうという予定。表題作は英語版でちょろっと読んだ記憶があるんだけど、なぜかニーヴンの“ノウンスペース”に出てくる“タスプ”と混同して、書店で「…

太陽の中の太陽

ハードっぽいカバー絵に、「リングワールド以来」という帯の惹き句で“でっかいSF”を想像して買ったが、いやこれこそ宮崎なんとかの絵でもいいのでは。リングワールドの舞台が地球公転軌道規模だったのに対してこっちは地球体積規模。それに比例してか物語も…

ハローサマー、グッドバイ

日曜に300ページまで読んでほっといたんだが、きょう最後まで読んだら、最後に階段から足を踏み外して転げ落ちたようにSFになりました。もちろん前半の環境描写で伏線がけっこうあったけれど、SFに関心の無いヒトが本気でちょっと変わった青春小説のつもりで…

月刊言語 2008 4

いまさらだけど、『月刊言語』4月号は素人にも楽しいね。特集“新しい語学のすすめ”ってことで、英語以外の16の言語について、それぞれ専門家が4ページの入門文を書いてる。 タガログ語が動詞で始まる言語だとか(文末にくる日本語、文中にくる英語があるんだ…

大奥 3

よしながふみの漫画。2巻では、これは両方とも女性な恋愛劇なのかなと思った。女性の家光は意思に反して閉じ込められ、暴行を受け出産し、その子供は息をしないという典型的な“いじめストーリー”を経験する。かたやの坊主 有功は、大奥という異世界に押し込…

夜の大海の中で

いままで何故かベンフォードは苦手だと思っていて、それは文体が堅すぎる割にその引き換えとなるアクロバティックな展開もないからだという思い込みからなんだけど、もはや早川の新刊からは冗長で下品なシンギュラリティものか漫画的なキャラクターシリーズ…

ディアスポリス-異邦警察

たまたまつけたNHK-Gの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、フリーの編集者 長崎尚志 が『ディアスポリス』の原作者として出てきた。へええ漫画では“リチャード・ウー”て名義になってたけど、正体は凄いヒトだったのね。浦沢直樹の立役者的なヒトだそうで…

キルン・ピープル, ハゲタカ

キルン・ピープルは無事読了してます。軽いタッチの探偵モノだとしても、ブリンせんせいでこの厚さだから絶対異星人とコンタクトするか宇宙の秘密が解明されるされるかのどっちかだと信じてたわけで、信じといてよかった。『ハゲタカ』は本放送でもこないだ…

キルン・ピープル

『ウォー・サーフ』をやっと読み終えて『キルン・ピープル』の上巻まで来たけど、ブリンせんせいは 馬 鹿 だ な あ ! パーマンのコピーロボットがもし実現したら、を全方位で突き詰めたこの馬鹿っぷり。言葉遊びのみが目立つバックナーの著作に比べたら、格…

こんな本もある

五反田の書店で『学研ミステリーツアー・信じる信じないはあなた次第』と称してムーブックスのキャンペーンをしてる。はじめて見たけど、特設棚に立てられた数十冊の極彩色。なるほどコレは並べたくなる。 まあ一冊目が『聖書に預言された神国日本』なんだか…

狐狸庵食道楽

月に1冊ぐらいは食に関する文庫本を買うんだが、これはちょっと失敗だったなあ。 没後10周年ということで遠藤周作の食に関する文章を集めたとのことだけど、焦点がまるで食に定まってない。遠藤周作で食道楽なんだから面白いに違いないと表紙買いした僕が悪…

月刊言語:ゾウ語の謎

今月の『月間言語』のコラムに、「ゾウ語の研究」というのがあった。月間言語もいよいよ非人類言語の研究に関わり始めたかと思ったら、ゾウの話す言葉でなく、“ゾウ使いがゾウに命令する言葉”のことだった。でもこれがおもしろい。インドシナ各国にはゾウを…

ひとりっ子

イーガンせんせいの短編集。おもしろかった! ハードサイエンスより、ということだけど、イーガン作品を読みなれたせいか(&立ち止まって深く考えられるほど頭がよくないので)、特に気にせずどれも感動できた。『決断者』は表現がまだるっこしかったけど。…

ヒルズ黙示録・最終章

一冊めは読んでないけど、今回は裁判編と聞いて読んでみた。 いやあドラマだなあ。ライブドア事件は総て終わったら、ぜひ 本 人 主演 でミニシリーズの法廷ドラマにしてほしい。裁判シーンと、それに至る各キャラの過去がカットバックする形式で。 なにがド…

大奥 2巻

よしながふみの漫画。ほかに比較できる作品を知らないんで言いようがないけど、こりゃ凄い。泣けるわ。 IFの世界(舞台)を作ることで、通常の舞台では描きだしにくいヒトの性質や感情を明らかにして見せる、まごうことなきSFだと思う。僕基準で。 どうでも…

神は沈黙せず

さいきんは洋モノSFもガツガツ読めるやつに当たらないんで、和モノを。山本弘の、3年前ハードカバーで出たヤツの文庫落ち。なんか事前に想定してたとおりの感じだった。僕の好きな“おおきなSF”ラインで、スラスラ読めるんだけど、筆者の好きなものが表に出す…

シンギュラリティ・スカイ

ちょっと前に読み終ってたしかに楽しかったんだけど、どこか違う。なんとなく物足りない。なんでだろ。 なんとなくだけど、冒頭で電話の雨を降らせてコイツはSFでっせーとヒラヒラ旗をふってくれるのが、逆にウザかったのかもしれない。ロシア的な舞台設定も…

ダ・ヴィンチ・コード

人気作家にこれ以上カネを渡してなるものかと毎週末古本屋に狩猟に出かけてたのが、どうにもめんどくさなって買ってしまったのがひと月前。いつのまにやら映画も公開されてるし、メモを残しとく。うーん楽しめなかった。だって暗号って、クイズみたいなのを…

さらば愛しき鉤爪

写真は実家で食べた生の白魚。しかし結局なにもやらずに過ぎ去った休日だったなあ。 ふと思い立ちエリック・ガルシアの『鉤爪』シリーズを読み始めてる。探偵小説だけど、設定はSF(恐竜から進化した知的生物が人類社会に密かに溶けこんでる)だよなあと思っ…

マッカンドルー航宙記 太陽レンズの彼方へ

インチキ仕事を早く切り上げたんで八重洲ブックセンターに寄って、ハワカワの復刊フェア平段に並べてた店員さんにマッカンドルー航宙記のあたらしいのありますか訊いたら、見本分(?)です言うて一冊もってきてくれた。これってフラゲってやつ? フライングゲ…

おもいでの単語。

読書の記憶のなかでは、『アルファ・ケンタウリ』という単語が、こころにずっと染み付いている。 ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』を読んでいて、これがサイバーパンクの始祖かよわっかりにきい文章でウダウダウダウダ続けやがって二流の日製マン…

ガセネッタ&シモネッタ

ロシア語通訳 米原万里のエッセイ集。作者について知っていたわけでもなく、書店で衝動買いして、そのままつらつらと読んでしまった。同じネタのエッセイが複数収められてたり、リサイクル感漂う構成だったけど、全て興味深く読めた。 が、このエッセイ集の…

だいショック!

『タフの方船』2巻が……薄い! この倍は読みたかったのに……。