太陽の中の太陽

ハードっぽいカバー絵に、「リングワールド以来」という帯の惹き句で“でっかいSF”を想像して買ったが、いやこれこそ宮崎なんとかの絵でもいいのでは。リングワールドの舞台が地球公転軌道規模だったのに対してこっちは地球体積規模。それに比例してか物語もこじんまりして見える、青春冒険譚だった。前半の艦隊発進のモブシーンとか、確かに密度の高いアニメ映画でやったら奇麗そうだ。ただ終盤になるとかなり現代SFらしい背景描写が出てくるんだけど。

ストレートでスピード感のある描き方ですいすい進むし、情景も頭にぽんぽん浮かんでくる。でもその分心理描写に物足りなさを強く感じる。特にヒロインの“外から来た女”なんか、ラストの悲壮感はもうすこしぐっと書き込んでくれればよかったのに。もったいない。このへん、映像作品だったら役者や演出がよいと、表情ひとつで表現できちゃったりするコトなのかも知れないけど、もっと胸にくる文章で読みたかった。

そしてあのエンディング。なんか、これだけ映画的な冒険譚をやってくれたんだから、最後はもう少しエピローグ的なものをつけていただいてもよかったんじゃなかろか。うー物足りんわ。外の世界の描写もすっごく思わせぶりだし。ちゃんと続編出してくれよお。

でもいきなり3部作ですって出版されるとそれはそれで、めんどくさいからちょっと買うのパスなんて思ったりもする。プロバビリティうんにゃらとか。わがまま。