夜の大海の中で

gasoline2007-12-10


いままで何故かベンフォードは苦手だと思っていて、それは文体が堅すぎる割にその引き換えとなるアクロバティックな展開もないからだという思い込みからなんだけど、もはや早川の新刊からは冗長で下品なシンギュラリティものか漫画的なキャラクターシリーズしか出ないと悟って、亀島橋のSFがやたらと充実している古本屋でこれを手に取った。
読んでみると、飢えのせいか異様に充実感を感じる。始まりにエンサイクロペディア・ブリタニカ2073年版の引用を置くというところからしていとおしい。舞台となる1999年の描写も控えめで堅実で、驚くほどリアリティがある。思わずコピーライト表記を確認したけど、たしかに1972年の本だ。この真面目な想像力よ!
144ページまで読んだ。このページ、難病に罹った主人公の恋人が眠る姿を描いて、ふと文学っぽい表現が顔を出すのもいとおしい。

写真は関係ないけどこないだ行った東大の紅葉。