ガセネッタ&シモネッタ

ロシア語通訳 米原万里のエッセイ集。作者について知っていたわけでもなく、書店で衝動買いして、そのままつらつらと読んでしまった。同じネタのエッセイが複数収められてたり、リサイクル感漂う構成だったけど、全て興味深く読めた。
が、このエッセイ集の白眉というか最も感動した部分は、ディナーコースを模し『食後酒』まで続く彼女のエッセイではなく、そのあとの後藤栖子による解説。これは反則技とも言える落としかただ。
ネタバレは避けるけど、後藤氏の“状況”からの解説によって、一貫して明るく直線的だった筆者の文章全体から、立体的な米原万里という人間がクッキリと感じられるようになる。そんな印象。
言語ネタとして印象深かったのは、日本語で『宇宙開発』、英語で『スペースディベロップメント』という2語からなることばを、ロシア語では『人間による宇宙開発』と3語で表現するという話(故に宇宙そのものの“成長”と語義を混同しない)。
漢字語系以外は英語しか知らない自分にとって、ロシア語というのは、やはり根本から別系統な言葉なんだなあ、というのを思い知らせてくれる。