神は沈黙せず

さいきんは洋モノSFもガツガツ読めるやつに当たらないんで、和モノを。山本弘の、3年前ハードカバーで出たヤツの文庫落ち

なんか事前に想定してたとおりの感じだった。僕の好きな“おおきなSF”ラインで、スラスラ読めるんだけど、筆者の好きなものが表に出すぎちゃうところが鼻ににつくし、ネタの落とし方も喰い足りない。

例えば右巻き主張に対するスタンスは僕も同じなので、冒頭の南京関連のところなんか胸のすく思いなんだけど、後半その部分が、ちょっと不器用に出すぎててリズムを乱してるな、と思うところがある。あと、このヒト、アニメが大好きなんだなあ、と思った。こういうところは、あんまり読者層を広げる役には立たないんじゃないだろうか。造語も作りすぎだと思う。OSMっていったい何の略なんだろう

ドーキンス・ガーデンが出てきたところでオチは読めてたものの、最終的になんでそうなるのか、納得のいく説明がたりない。じゃあ何で人口無能がわざわざセックスについて質問するんだ、ほんの少しでもいいから理由をくれよって思っちゃうんだよな(そこに意味がないのがキモだとわかっていつつも)。イーガン先生のように、騙されきっちゃった心地よさは、残念ながら足りなかった。

とまあ、細部でイチャモンつけつつも、SFというか「大きな推理小説」として、じゅうぶん楽しめる力作でした。10年以上前、推理小説マニアの母親が『竜の柩』っての読んでて、SFっぽいから読んでみいわれたんだけど、ちっともSFでない「もどき」でがっかりしたことがあったけど、いまこれを読ませたらなんて言うかね。

補足:(OMSは筆者のWEB見たら書いてあった。O は Online かと思ったら Original だそうで、ますます意味がわからん)