航路

 コニー ウィリス著。棚からぼた餅的に図書券が手に入ったので久々にハードカバー大購入だっ。

 感想。わたしは文学にも文学史にもとんと疎いタダの翻訳SF読みですが、この非常にテンポの速い文体というか構成……つまり、テレビドラマの ER のような雰囲気は、こないだのニール スティーブンソンも同様だったんだけど、最近のアメリカの小説の流行なのかしら?

 テレビ側の人間からすると、“ERのような”ってのは、実際は80年代末から始まった高品位ドラマ・コメディ番組の特長なわけで、“クィーキィ”という単語で表わせるんだけど。

 てなわけで、非常に“クィーキィ”な良い小説でした。実のところ特に序盤はそれほどテーマやキャラに共感したってわけでもないんだが、それでも知らないうちに読み進んでしまう。見事にテンポに乗せられてる。エンディングは素晴らしかったが、少し空恐ろしい気も。

 あと、読み終わった後、キーとなる医療機器や薬品がフィクションだったと知ってちょっとガッカリしてしまった。非常にリアルで説得力のある話なので、知らず知らずに「ホントにこうだったらいいのになぁ……」と思っていたようだ。

 しかしあまりにもクィーキィドラマっぽいので、頭の中でいつのまにか英語ヴァージョンの役者とそれにつく日本語の吹き替えの設定まで出てくるというのは、ある意味感動した。病院はまんまER、主人公と女友達の会話はアリーマクビールのアリーとネル、ついでに看護婦はエレインで行けますな。