食い意地日誌:世界で最も無駄な寿司編

色々と複雑に入り組んだ事情があって、朝9時から飲みに行く事になったのだった。こんな時間から酒が飲める店なんざ競馬場の周辺でもなけりゃないと思っていたのだが、まあ探せば無いことは無いというか、連れて行かれたのは24時間営業の寿司屋。

ここがなんというか、24時間の寿司屋という概念にたがわぬ微妙にアレな雰囲気。チェーン店でも廻り寿司でもないのだが、ファミレスのように明るく中途半端に広い店内(二階席アリ)で、カウンタの中では5人ほどの職人が絶えず寿司をにぎっている。テーブル席に着くとメイドっぽい制服のウェイトレス(しかし微妙にトウの立った年齢の、なんとも化粧っけも無く、まあ微妙としか書きようの無いルックス)が注文を取りに来る。胸のネームプレートには名前と共に手書きで「趣味:映画」。値段は高くは無いが、こりゃ安い! というわけでもない。ネタは店長が市場までちゃんと買い付けに行くらしく、誇らしげに写真も飾られているのだが、24時間営業で職人も得体の知れない5人、だいたい日曜は市場は休みである。どこが味と値段の基準なのか、こちらが戸惑う。

そんななかで宴会を始めるのだが、注文の取り方を間違えてあっという間にテーブルが寿司でいっぱいになってしまう。酒とダベりを楽しみに来たのだからこれでは食べきれず、巻き寿司など海苔がどんどん萎びて行く。どうやら時間帯のせいで5人全員がウチの寿司を一斉に作ってしまったらしい。そしてアジのタタキはなんと活け造り、というかなんというか、とにかく肉を削がれ頭と尾の近くに串を挿されてU字型にされたアジが、クチをパクパクやっている。これは、ちょっと全員引いた。物凄くいのちを粗末にしてる罪悪感が沸いてくる。そして、哀しいかな美味いわけではない。テンションを保つのが大変であった。

しまいにはカウンターの中の職人が逆ギレしはじめて、「お客さん寿司がもったいないよ! のり巻きのオーダーストップしときますね!」なと言ってくる。おまえなあ、こんな店作っといて若いモンが7人も入って酒頼みゃどういう客かひとめで解るじゃろにバランスも考えず寿司てんこ盛に持って来たあげく、職人ぶるんじゃネェべ!! などと頭上に悪魔型のオーラを発しつつも、口ではハァすいません、すいません、お願いしますと何故か平身低頭してしまった。

異常な時間、異常な店での宴は12時前ごろに終わり、出てみると店外で待ってる客がいる。人気店だったのか……? ともかく、全員で日曜の真昼間酔っ払ったまま繁華街を縦断し、家路についたのだった。太陽が眩しかったわ。



ところで韓国にいた頃、朝5時頃のひんやりとした繁華街なか一種場違いに営業を続ける24時間のダッカルビ屋で、焼酎を満載したトレイを持ってこさせる客の一団を目撃して『さすが現地のヒトは違う!』と我々ニホンジンは思ったものだが、いま思えば単純なことだ。5時まで働いたヒトたちが、これから飲み会を始めるのである。


  • 朝上記のとおり。
  • 昼食べず。
  • 夜食べず。
  • 深夜カップやきそば。なんか1日無駄にした気がする……。