ダークナイト

gasoline2008-08-02


試写会で観た人が「21世紀最高の映画」と言ってて、まあその人の嗜好もかなり偏ってるし20世紀の終わり頃に同じような事を『タイタニック』で言った人もいたし僕は僕でどんだけ『ロボコップ』を全銀河史上最高の映画と言っても誰も耳を貸さないんで、あまり信じてなかったが、観たらホントに傑作だったので腰が抜けた。じょー(そのまま小便たれる音)。

物凄い勢いで展開する将棋みたいな映画だった。いや、あるいみ究極の詰め将棋なのだ。この映画は。

善と悪双方が、最初はバラバラと駒を展開する。一手々々の指し時間はひどく短いものだから、観ているほうはなんだか展開が追いづらく散漫に見えるかもしれない。ところが次第に駒が交わるようになり、大局がなんとなく読めるようになるにつれ、テンポは右肩上がり、こちらが思いもしなかった手筋が相互に繰り出され、中盤にはすっかり勝負に魅了されてしまう。そして、勝負の筋道が見えたかと思った瞬間、逆にこちらの囲いがガラリと取り崩され、そこからこの戦いの本当の意義が見え始める。これは究極の将棋だ。

後半は歴史上の名人戦が次々と盤上に再現されるような、極限の戦いだ。意表をついた戦術が物凄い勢いで繰り出されるが、しかしそれらには全て伏線と、意味がある。これ以外は考えられない“詰み”のかたちへ突き進むため、一手々々に意味が与えられている。永遠に続く嵐のような勝負を見終えたとき、そして我々は納得する。これは、この上なく美しい詰め将棋だったのだ。我々の知っている“バットマン”とは、つまり、こういう事だったのだ! と。

いやあ、5時間ぐらい観続けたかのような密度だった。ほんと中盤で2時間たって映画は終りかとおもっちゃったもん。この細かなカット割りとクィーキーな展開は、『24』や『ロスト』で一般にも定着した現代テレビのテンポ感。一昔前ならテレビ12話分のボリュームを、よくも1本に編集しきったものだ。もう一度観たくなる良い映画だった。

しかしバットモービルにあのギミックを仕込むの考えたヤツはエラいなあ。あの機動にゃ手ぇ叩いて喜んだわ。燃料タンクどこについてんだって感じだが。