バトルスター ギャラクティカ

gasoline2007-02-24


こちらの日記の2月17日付でこんな映像が紹介されてから1週間。

気がついたら米国版第1シーズンのDVDボックスが手元に。あー先日『ウィル&グレース』の後期シーズン買わないことに決めたばっかなのに、気がついたらAmazonでクリックしてたわ。まああんな映像(地上のレジスタンスを援護するため大気圏内に強引に超光速ジャンプ→艦載機射出→摩擦熱で分解直前にジャンプアウト)見せられちゃうとなぁ。7000円て、思わず買えちゃう価格だから怖い。

で、DVD1枚目のミニシリーズは以前観ていたので、2枚目からの第1シーズン13話を視聴。これはヤバい。「一般ドラマとして」近年5本の指に入るという評価も、あながちウソじゃないと思えてしまう。宇宙SFでここまで踏み込んだ演出−−『NYPDブルー』のようなハンディカムチックな撮影手法や、クロースアップの多用(作りこんだセットがあるのにセットを見せない勇気!)、世界観をきちんと踏襲した会話−−が観られる時代になったかと思うと、感慨深い。その魅力をつれづれと書いてみる。

なにはともあれ、まずはキャラクターの魅力だろう。こちらでいみじくも「白メシ3杯イケる」と表現されたように、アマダ艦長の存在は、渋いオヤジキャラの歴史に燦然たる1ページを加えてくれた。旧海軍の山本五十六や宇垣中将にファンタシーを抱いてしまう歴史マニアも納得の軍人キャラだ。特に第10話の親子の対話(というか実質会話すらなく、ラストに息子に向かってニヤりと微笑むシーンだが)は、観てるこっちがドロドロに溶けそうなシブさだ。ついでにこの回の戦闘シーンでの、戦略地図(地図の上にミニチュアの船や戦闘機を動かして戦況を見るヤツ)を用いた演出のカッコ良さは奇跡的だった。

無論渋いオヤジは彼だけではない。副長(ハゲでアル中で嫁が淫乱)やバルター博士(ある種の妄想が進行して女性キャラに自慰行為を目撃される)も見逃せない。

それ以上に魅力的なのが、脱出した人類の女性大統領、ロズリンだ。オープニング映像にも組み込まれているが、教育長官だった彼女が、たまたま宇宙船に乗船していたために敵の核攻撃を免れ、全滅した大統領と内閣の後継者として声を詰まらせながら船内で大統領に就任するシーンはとても印象深い。途方も無い悲劇性と、それでも生き続ける人類の力強さが、小さな彼女の体にすべて込められている。そんな彼女がアダマ艦長と対等以上に渡り合い、時に自らの権力を守るため策略を巡らす、表も裏もある政治家として成長してゆく。『火星転移』や『ハイペリオンの没落』でもそうだったが、女性リーダーというのはどうしてこうカッコいいんだろう。

劇としても、彼女をレギュラーキャラとして加えたことは最大の成功要因だったかもしれない。よく考えれば当たり前だが見過ごされてきた文民政府という存在をきちんと提示したことで、脳たりんな軍事アクションに陥りがちな(旧作はそうだった)宇宙SFを、リアルで深みのある政治劇に転化できた。現に第11話は難民たちの選挙の話だ。ほかにもアメリカドラマお得意の法廷劇(軍事査問会)など、バリエーションに富んだエピソードが展開されることになる。

更に、この連続劇の牽引力となる魅力として、敵勢力サイロンの謎がある。いまのところ『ロスト』と同じで、その真の目的はどうとも捕らえようの無いものだが、この物語での人類が多神教を崇拝しているのに対して、サイロン一神教を崇拝しているというのは非常に面白い。この物語では人間キャラは Oh my Gods! と叫び、サイロンキャラは Oh my God! と叫ぶのだ(芸コマ!)。

この宗教設定はエクソダスという本来は露骨にキリスト教的な側面をうまく隠して、一段複雑なものに昇華させてるし、機械生命体であるサイロン−−彼らは破壊されると、そのメモリーは別の個体にダウンロードされる−−の信ずる“唯一の神”というのは、実はこれシンギュラリティSFに化けるんじゃないか、という淡い期待を抱かせてくれる。まあンなこたないだろうけどね。

スタートレックエンタープライズ』が失敗に終わり、『スターゲイト』が旧態依然の形式で惰性で続くなか、この新しい宇宙ドラマがどこまでがんばれるか、最終的にエクソダスを完了して地球にたどりつけるのかどうか、とても気になる。まさか旧作と同じで1980年のロサンゼルスに到着することにならなきゃいいが(ニュージーランドのテレビで観て腰抜かした記憶がある)。

さて……第2シーズン買うのはすこし控えよう。

Battlestar Galactica: Season One [DVD] [Import]

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