トゥモロー・ワールド

10年に一度ぐらい、ヴィジュアルエフェクトを本当に善く使ったSF映画というのが出てくるんだろうか。95年の『ストレンジ・デイズ』がそうだった。これもそうだ。どこまでがCGIかまったくわからないCGIの使い方は素晴らしい。監督は『ハリー・ポッター』を1本撮ってるそうだが、CGI利用の匙加減を心得てるようだ。ワンカット長回しで動きまくる画面も、『X-Files』の"Triangle"や『ブレイキング・ニュース』では目玉のギミックみたいなものだったのが、この映画では全編で違和感なく用いられ、独特の映画のリズムを作ってる。

ストーリーはイギリスらしい素晴らしい自己嫌悪感とユーモアに彩られたディストピアSF。エンディングの余韻を含めて、非常に魅力的な世界を見せてくれた。ストレンジ・デイズもそうだったけど、良質のノヴェラを読んだ気になれる(ていうか原作は有名なSF小説だとの事だけど、未読)。イーガン先生の作品も、1本ぐらいこんな感じでアレンジして映画化してくんないかなあ。いや無粋なこととは思うけど。

ところでこんなマイナー映画まで戸田せんせいがやってんのは、むしろ戸田せんせいのネームバリューで少しでも客の気を引こうというマーケティング的な要請なんでしょうね。