日本沈没

映画館はこれがガメラと同じ館かと思う大盛況。前の回が舞台挨拶だったらしく、階段わきでサイン責めにあってる監督を目撃。けっこう裕福な家庭で育ったのかなあと顔見て思った。なんでかわからんが。においが。

映画は『ディープ・インパクト』日本版+『ホテル・ルワンダ』の白人が脱出するシーンが延々続く感じ(非常に失礼なたとえ)。ディザスター映画とは思えん、のや〜んとしたBGMにつけ、主人公の所在なさげっぷりにつけ、こんな映画、たしかに日本でしか作れんなあと思う。

高校の頃読んだ原作はもっと世界描写に幅のある大河ドラマだったと思うし、旧作映画はもっとバイオレンスな感じだったような記憶があるけど、本作はキャラクターをある意味うまく集約して、ラブストーリーに見えるようにしてる。いろいろいろいろいろいろいろいろあるだろうが、なにはともあれSF的な状況を(ある程度)活かして愛と別れを描き、観客のすすり泣きをおこさせたのは素晴らしい。

いっぽう、ガジェットの魅せ方は完全に男の子映画で楽しすぎる。メカが出るたびわざわざ太ゴシックで名前が出るんだもん。オープニングのヘリといい、艦船・潜水艇といい、現存のマシーナリーがスーパーメカ然として存在するのは、それそのものがSFだ。宇宙ステーションなんて、オープニングで画面横切るだけだけど、こんなのが現存する(予定)のが今の世界なんだと思うと、ゾクゾクする。

ツッコミ。設定の破綻は物凄くて、近未来なのに2006って電光掲示してんじゃねえとか、渋谷まで水没してんのに横須賀が無事たどういうことだとか、犠牲者3000万人で北海道半分裂けかかってんのに函館観光してんじゃねえとか、そもそも早々に3000万いってりゃ既にパニックどころか国家破綻してるよねとか、N2爆弾てなんだありゃ素直に水爆じゃねえかとか、いろいろあるけど、なにより困惑したのが主人公の瞬間移動っぷり。完全に破綻した日本を、灰ひとつかぶらず移動する。そしてセックスをしない。おまえは不思議な少年か。

と、こう書いて思ったがははーんこの映画、ディザスター映画でもラブストーリーでもなく、救世主を描いた神話なんだな。『ロボコップ』がSFバイオレンスを借りた神話で、その証拠にロボが水上を歩いてる! ていうのと同じで。だったらいいや。

というわけで、たっぷり楽しめた映画でしたよ。もっかい観てもいいくらい。

ピエール瀧は今回も妙に存在感があったが、それ以上に富野由悠季のそれは異常。