単騎、千里を走る

スピルバーグ先生と張芸謀先生、どっちのキチガイ先生の映画を観ようかさんざ迷ったものの、ミュンヘンはそこらのブログに感想が続々と上がってるので、単騎、千里を走るにした。

漁師の高倉健が、末期癌の息子の代わりに頼まれても無いのに昆明の山奥まで仮面劇を撮りに行ってひと騒動。まったく無茶なシノプシスでありますが、これは『あの子を探して』や『初恋のきた道』のジジィ版なので細かいところはどうでもいいのだ。つまり高倉健にトキメいてしまった芸謀先生がそのトキメキを伝えるためだけに作った正しい映画。自分が観たい絵だけ撮ってカネ稼げる映画監督はキチガイ以外にいません。

それでもちゃんと仮面や日中の対比を通して「親子」というぶっといテーマがキチンと顕れてるから、芸謀先生はやはり芸を謀らせたら天下一品。ただ今回は、ちょっと絵が弱かったのが残念。雲南はともかく、日本の寒々した光景は、一本抜けたところが観られなくて、普通の映画みたいだった。短いロケと現地スタッフじゃあ、先生でも限界があったってことか。

あと、日本人通訳の言葉が読んでるだけで、日本語が解る我々には大きな不満点となるだろう。けど、個人的には日本語を喋る中国語話者特有のあいづち、「ん」が十分聴けたから満足。昔の本家日記にも書いたような気がするけど、この「ん」が可愛いのだ。中国の娘は。


最後にネタバレしますが、底意地の悪さでもスピルバーグとタメ張る芸謀先生は、今回ガキがライブでババたれるという絵を撮って、あろうことかそこで観客を大感動させようとします。このエゲツなさ! やっぱキチガイ先生は偉大だ! ほんとマゾ向けの映画だわ。