食い意地日誌:歌舞伎町ビトレイアル編

きのうの夜の日記。

久々にニュージーランドの某さんと食事でもてなことになって、新宿まで出てきた。メンバーはいつのまにか増えて5人。全員ニュージーランド繋がり。目指すは歌舞伎町の路地裏にある上海家庭料理の店。中華料理を本格的に探訪しているサイトに載っていた、いわゆる“ほんとうの中国”の店なので、これは行かねばと思っていたのだ。

イカニモな路地裏をちょっと行ってある店。中に入ればまあ実に、中国らしい雰囲気。拒否反応を起させない適度な臭いと、適度な壁のぺと付き具合。二階の奥に通されて、たーっとオーダーする。ビールは青島もあったが、アサヒで構わぬ。白飯は無論ボウルで。さあニュージーの中華屋で喰ってた雰囲気になってきたぞ!

そして早い。オーダーして最初の品が来るまで1分程度。まあ煮込み系が多いんで作り置いてあるんだろうが。先ずはトンタン。豚の舌。ビールのつまみやね。揚げ麩とへちまを土鍋でとろっと煮たものは、これだけ柔らかいのにちゃんとキュウリ系の風味が力強くするという、なるほどヘチマを使った理由がわかる品。種の感触が面白い。庶民料理のスタンダード、魚香肉絲(ユーシャンロース)を食べると、ああやっぱり中国人の中国料理だ!という気分がする。が、味はとりたてること無し。白飯を掻き込む。この器が小振りの白陶器でなくプラ製のあかちゃん茶碗であるのが、惜しいと言うかいかにも日本らしいと言うか。こちらもスタンダードな青菜はくきくき筋っぽく、理想から離れるな。里芋と大豆(枝豆)をこれまた土鍋でとろっとさせたものは、素朴な塩味でクセになる。まあ中身も味付けもツマミに近いか。田ウナギ(どじょうの長いヤツだが、単なるどじょうかも)を辛く炒めたモノは、名前に違ってそれほど辛くはない。むしろ「漢方薬?」と言ってしまうような濃い薬味が舌にくる。田ウナギの泥臭さを消すためだろう。しかし物珍しさが先に立ってしまい、肝心の味が楽しめる領域かというと、ちょっとこちらの経験値不足か。

で、結果。正直書けば、5人ともどうもそれほど感心するには至らなかった様子。奇妙な矛盾と言えるが、『ニュージーでもっと美味しい中華を普段食べてた!』と思えてしまうのだ。いやむしろ、あのドミニオン・ロードの香港家庭料理“ラブアダック”の味が、飛びぬけて良かったのかもしれない。もちろん今回たまたまメニュの選択が悪かったのかもしれないし、あちらは広州でこちらは上海なんだから単純比較はできない筈だが、それでも、もっと家庭料理の基礎となる部分で、あちらのほうが美味しかったのでは、と思える。

ひょっとして、だ。前世紀末期に毎年全人口の1%ずつがアジアより移住して来たニュージーランドでは、香港や台湾、或いは北京である程度良い腕を持っていて、その現地での腕前を忘れていない料理人たちが、次々と店を開いていたのではないだろうか。

思えば、棒棒鶏が絶品だったマヌカウシティの四川料理の店も、四川料理の高級レストランとして見れば三流だったかもしれないが、四川風家庭料理の店として捉えれば、ビールも白飯もいくらでも進む素晴らしい味付けであったと思う。

無論本当に良い料理人なら、本国で繁盛していようからわざわざ南洋の離島くんだりまで来る理由は無い。しかし、二番手ぐらいの腕を持つ料理人が、本国に見切りをつけ、生活環境を求めて流れてきているのなら……? ニュージーランドで、最も活きの良い中華家庭料理の味を、ある種ディフォルメされた形で、我々は知ってしまったのではないか。そう幻想してしまった。

とまあ、そんなことはおいといて、勢いに乗って注文しすぎたのかかなり残ってしまったので、白飯も含めて全部お持ち帰りにしてもらった。すっかりニュージーのテンション。そいつらは私が後日全部責任持って食べきります。ゲヘヘ。でも価格はひとりあたり3500円程度。うーん……。

その後南口近くのバーでワインを2杯、それから西の大江戸線駅近くにまわって、某さんより屋台でラーメンとモツ煮込み、ウーロンハイを御馳走になる。モツ煮込み、おいしゅうございました。


  • 朝お茶漬け。
  • 昼きのうの残り。
  • 夜また食べずに寝ちまった。