NHK-G:NHKスペシャル『ヤノマミ 奥アマゾン原初の森に生きる』

さっきまで“ヤマノミ”って書いてたよ。あたまんなかじゃ「ヤノマミ」ってわかってるのに!


しかし、うーんこういうドキュメンタリの作り方は好きじゃないんだな。

この番組に出てくるアマゾンの風景は、息を呑むほど美しい。動物も、虫も、森も空も雨のしずく一滴に至るまで。そして、そこに暮らすヤノマミの人々も、とても美しい。素朴な笑顔にあふれ、彼ら彼女らの伝統の中に生きている。そこにはさまるナレーションも、詩的で美しい。

上の文章の「アマゾン」を「日本」に、「ヤノマミ」を「日本人」にすると、その気色悪さがよくわかると思う。そんな番組を作ることは可能だ。ガイジンの視点で、美しい日本と、日本のユニークな文化を描くことは。

でもそれって、日本の何をドキュメントしたことになるんだろう? ガイジンのイメージというか、レッテルに沿った範囲で、可能な限り日本人(ヤノマミ)を美化して描いて。

見てる限り、このドキュメンタリは、本質的には川口探検隊の“未開の部族”と変わらないように感じた。科学的、文化人類学的な側面がほとんど消えている。は、まったく伝わってこない。

ヤノマミという民族を伝えるのであれば、大自然や狩りの絵ばっかりでじゃく、もっと多面的な描写が必要だと思う。科学的、文化人類学的な側面がほとんど消えている。彼らがなぜこうなのか、何に直面しているのかを伝えるべきだ。取材対象もちゃんと個人(とか家族)に絞って、その個人と会話(インタヴュー)して、その生活と考えを伝えるべきだ。

今回の番組では、くらしを伝えながらも個人を伝えず、ヤノマミ全体がこういうものだという印象を、美しい自然風景に載せて作ってしまう。

しかし、これが10年間取材交渉をした結果なのだそうだ。それがNHK独占なのか、海外他社との共同だったのかは知らないが、後者であってほしい。BBCなんかなら、同じ絵からでももっと中身の濃い番組にしてくれるだろう。ただ、番組の中で日本人の声が聞こえてくるから、NHK単独っぽいんだけど……。


同じNスペのシリーズ『JAPANデビュー:第1回 アジアの一等国』が偏向だなんだと言われているが、あちらの方がコンテンツとしてはよほど良い。あちらは、どちらかといえば“批判”だからだ。こちらは“美化”だ。身勝手な美化は、真実をどんどん隠してゆく。

でも、綺麗なんだよな……。風景も、動物も、ヤノマミの人々の表情も。