SFの秋 バトルスター・ギャラクティカ / 新スタートレック

gasoline2008-09-14


いつのまにやら秋になってしまった。『バトルスター・ギャラクティカ』はシーズン1吹き替え版の放送が終わって、シーズン2字幕版が始まる。実はシーズン2の前半までは我慢できずに観ちゃったわけだが、ヤバい。シャレんなんないぐらい熱中できる。シーズン1で「なんかまどろっこしいな……」と思ってたところも消えて、ぐいぐい引き込まれ次が観たくて仕方なくなる。特にバトルスター・ペガサスが! 艦長が! ああっ!

これをテレビで毎週観るというと、毎回7日待つのはまだるっこしい。難だったらDVDで一気に観るほうがイイかもしれん。



ところで同じスカパーで地味にやってる『新スタートレック』(TNG)のベルト放送(スーパードラマTV 18時 / 深夜2時)をあきもせずHDDに毎日録画させて観てるんだが、火曜からついに第3シーズンが始まる。僕のSFの原体験だ。

TNGの初期のエピソードは、オリジナルシリーズの香りを色濃く残し、“奇妙な人々の住む星を訪れ、奇妙な風習に巻き込まれる”とか“謎の生命体に遭遇し、不条理な体験をする”というストーリーが多かった(もちろんそうでない物もあったけれど)。宇宙の「ふしぎ」が「ふしぎ」のままで残された状況劇で、科学的な展開に乏しかった。

そんな“古いテレビSF”が、第1、第2シーズンを通して少しずつ変化してゆき、第3シーズンで完全に“新しいテレビSF”のスタンダードを確立する。現代の天文学や先端科学でも聞き覚えのある現象を扱い、“それが何なのか”“もしそれが実在したらどうなるか”をきちんと説得力をもってストーリーに織り込めるようになった。また、「奇妙な民族」でなく、その成り立ちや生活風習に説得力のある様々な異星人が登場し、彼らとのリアルな外交が物語の主軸となった。

たとえば第3シーズンプレミア(日本では3-2話)『進化の刻印』は、エンタープライズが観測の為に訪れた中性子星赤色巨星の連星系を舞台に、ナノマシンを扱った物語だ。中性子星の引力は赤色巨星のガスを吸引し、定期的に爆発を繰り返す。オープニング、両恒星とその間のガスベルトが特撮で描かれ(CGはまだ部分的な利用だ)、コンピュータの不調で微粒子帯に引き込まれるエンタープライズ。そこでピカード艦長がつぶやく一言。「どうやら内側から爆発を観測することになりそうだな」 渋い! そしてナノマシンを正面から扱ったSFとしては、映画『ターミネーター2』より2年早い(実は隠れたナノマシンSFである『逆襲のシャア』よりは1年遅いが)。

このエピソードのように、第3シーズン、第4シーズンには、物凄くスタンダードなSF作品が多い。15年前、このシリーズを通して感じた感動から、僕はSF小説を読み漁るようになった。直接的には、ダイソン球天体が出てきたエピソード(これは第5シーズンだが)から、ニーヴンの『リングワールド』に転んだ。

スタートレックは「SFの姿をした家族劇」だという人もいるし、アクションやサスペンスに満ちた前後編エピソードや映画版だってあるにはある。だけど、本当に面白いのはこの1時間に詰め込まれた、芯の通ったSFにある。もちろん設定としたら甘い部分だらけだけれど、本質は、物語の展開が論理的である事、そして、世界が変わる感動があることだ。

写真は新宿三井ビル