鯨とか

国籍とか性差とか血液型とか、便利なレッテルにもいろいろあるけれど、“狩猟民族と農耕民族”つうのもいい加減スゴいな。白人は狩猟民族的思考でってちょっと待て。南氷洋まで繰り出して銛で野生の哺乳類狩ってるのはどっちだ! “野生生物の捕獲”という意味じゃ、いまだ魚を食べまくる日本人は世界最後にして最大の狩猟(漁)民族だろうよ。大半の海産物が養殖になったなら違うだろうが。

いちど「韓国人は狩猟民族だ。怒りっぽいし焼き肉文化があるから」と言ったひとがいて、どっちが先に稲作始めたんじゃ! と突っ込んでしまった。まあこれはA型人間はうんぬん程度のたあいもない面白トークだったわけだけど、本気でそういうレッテルで人を括ってる人がいるんじゃないかと思うと怖い。「神はアメリカ人だ。聖書が英語で書かれたから」つうアメリカ人並みの怖さだ。

あとどこから来たのか知らんが、農耕民族はセックスを長くねちっこくやるという言説も凄い。狩猟民族は情熱的だが短い(敵に襲われないため)と。確か欧米と日本のセックスにかける時間のデータがあったと思うけど……。


いやこれを前置きとしたら滅茶苦茶だけど、何かっつうと、文化だからといって南氷洋捕鯨を続けるっつうのには、どーーおしても違和感がある。ヤツらは日本人の文化と性分を分かってくれないというのは、欺瞞だ。ミンク鯨を放置すると他の海産資源が減るという話はもっとヘンだ。じゃあ戦後になって日本人が近海の魚と鯨を食べ尽くして南半球に行く前は、現地の魚は今より少なかったんか?

……IWCでの活動が、官僚のていのいい保身の手段として使われている可能性は、ないのか?

太平洋沿岸でも大群をなしていた魚や蟹が、戦後とんと穫れなくなったのは、海洋汚染とかでなくもっと単純に、戦争直後の日本人が、牛や豚に頼らず、一億二千万まで個体数を増やすために、必要なたんぱく質アミノ酸をを海から吸収した結果ってことなんじゃなかろか。

それはそれで仕方が無かった。でも、もう人口もピークを超えて、牛も豚も飼育できるものは厳密にアミノ酸生産量から逆算して必要量を供給できるようになって、いい加減天然海産資源を漁りにいくのは控えざるを得ないんじゃないかね。南極で魚や鯨を取ったって、それは取ってるだけで増やしちゃないんだし。美味しいもん大好きだし、魚大好きだし、天然物の味は静岡でそれなりに知ってるつもりだけど、世界の事考えれば、天然物は何であれもっと漁獲高抑えて、高くなっても仕方ないと強く思う。いままで海から泥棒してきた罰なんだ。

食糧難の時代じゃないんだし、船団組んで南氷洋なんて、いいじゃんもう止めて。せめて近海で、超細々とやって、高い料亭でだけ食べられるぐらいであと100年ぐらい我慢しないと、なんないとちゃうんかなあ。