NHKスペシャル 最強ウィルス2「調査報告“新型インフルエンザの恐怖”」

きのうのドラマパートを受けての現実パートだけど、まあ“作品”としては散漫なつくり。もちろんこの番組は作品としての出来がどうこうよりも、現実に迫りくるパンデミック対策の現状をなるべく広く伝えるところにあるんで、どうこう言うべきじゃあないな。
NHKは少し前にも、朝のニュース枠で「もし新型ウィルスエンザが起こったらどうすべきか?」という特集をやってて、とにかく“必ず起こるものですから備えてください”という口調だった。なんだかそれだけでSFっぽい状況だけど、科学的に考えれば当然なわけで、これをまじめに報道するNHKは義務を果たしていると思う。

アメリカでは、少し前に『ER』がワシントン側から医療啓蒙のための内容作りの“お願い”を受けてて、その事実を秘匿したまま政府の意図する番組を作るのは中立性が損なわれるのではと、ちょっとした問題になってた記憶がある(ERの内容は、一貫して現政権に批判的なんだけど)。だけど、問題はそれが秘匿されていた事であって、医療の啓蒙そのものが悪いとは思わない。むしろ、映画と違って無料で誰でも見られるテレビドラマという表現形態の、重要な役目のひとつだと思う。ERが視聴率や役者の降板に左右されずにシーズンを重ねる理由のひとつは、この啓蒙ができていて、価値を認められているからだと思うし、ER以上に続いている刑事&裁判ドラマ『ロー&オーダー』(スピンオフでなく無印の)も、陪審制度の啓蒙という効果がある。

NHKにも、政府や厚労省筋から“お願い”が来ていたのだろうか? あるいは、番組制作のエラいヒトが、民間の研究関連のエラい人から頼まれたのかもしれない。いずれにせよ、ドラマは厚労省の体質を強く批判する部分もあり、フェアであったと思う。ただ、日本でもこういった番組はNHKでなく民法で流すべきだと思う。『おはよう日本』でなく、『めざましテレビ』を観ているひとたちにも、情報を必ず伝えるべきだ。また、裁判員制度が始まる日本に、ロー&オーダーと同様のドラマが存在しないのは大変残念なことだと思う。

ちょっと夢想するけど、『ER』でも次のシーズンあたり、1年かけてパンデミック状況下の医療ってのを綿密にシミュレートしてドラマに仕立ててくれないかね? あのERクオリティでやられたら、ムチャクチャ面白そうだし、それこそ社会に絶大な効果がありそうだと思うんだけど。

ところできのうのドラマ見終わってひとつ。ドラマ自体はテレビ1時間枠という短さの中で、状況劇として十分健闘していたと思うんだけど、千住明の音楽がちょっと踏み込みが足りないというか、ドラマチックさを抑えたドキュメンタリー向け音楽になってたのが残念。ここぐらいは派手にやってくれてもよかったのに。例の悲壮感みなぎるストリングスで。