電脳コイル

実は夏頃からハマってる。よく観るサイトで評判良く絵柄も良かったんで、英語や韓国語の勉強ついでにと思い海外(略)で観たら、ドハマり。なんつうかコレは、ビジョナリーだね。以下適度にネタバレ。

――近未来。インターネット・テクノロジーは進化を遂げ、三次元地図データに様々なアプリケーションをリンクさせ、それをメガネ型デバイスを通して現実空間に投影・操作する拡張現実としての“電脳空間”が生活の一部となっていた。
地方都市に引っ越してきた小学6年生の優子(ヤサコ)は、空間のはざまから出現した擬似生物状のバグ“イリーガル”と遭遇する。彼女には幼い頃、謎の少年とともにイリーガルと遭遇した記憶があった。ヤサコは空間をハックして遊び場とするフミエら同級生たちと祖母の助けを得、電脳空間に潜む謎に接し、自分の過去を解き明かしてゆく。
一方、電脳空間に自分の大切な人の魂を持って行かれたと信じる少女イサコは、高度なハッキング・スキルでネットの深層へのアクセスを試みるが、それは過去の過ちからバグの一掃を図る空間管理室 タマコとの対立を招いていた。それぞれの思惑が重なったとき、拡張現実の表層からサイバースペースの奥底への回路が繋がり、全ての謎の鍵となる“電脳生命”とのコンタクトが始まる――

てなわけでかなり恣意的に言葉を選んで梗概を書いてみたけど、前回のエピソードまで観たところ、ひょっとしたらファーストコンタクトSFにもなりかねん勢いで、思わずキーを叩いてる次第。……なにかっつうとFCシチュエーションを求めすぎる自分の悪いクセだけど、もしホントにそうなったらわたしゃ歓喜して製作者を殺しに行きますがね。なんでこんなテーマをこんな面白く作って他のクリエイターのチャンスを潰したのかコンニャロー!と。

ギブスンの読っみづらい『ニューロマンサー』を何とか読み終えて僕が膝を叩いて喜んだは、やっぱりサラッと、オマケのように最後にファーストコンタクトしてたからなわけで、サイバースペースの概念をより現実感のあるモノとして翻案・再生させた本作なら、ひょっとしてそこまでやってくれるかも、という幻想がある。ノイマン式コンピュータの上に成り立ち重層化したサイバースペースのどこに、生命が発生する余地があるのか? はたまたサイバースペースにトラッキングされた人間の行動という器に、魂が宿り得るのか? それとも無限に近いノードを持つインターネットは、異星からのデジタル信号も受け入れているのか? そんなことまで夢想しちゃう。

次のエピソード観たらそんなシチュエーションなんてどこにもない瑣末な設定の一部で終わってる可能性は高いんだけど、本作の凄さ、面白さは、そんな深読みまで許容させちゃう確固たる世界を持ちつつ、少年少女のひと夏の体験と成長を描いた立派なジュブナイルとして成立させているところだ。モノローグや説明的セリフの多い、アニメでないと到底許容できない演出なのに、それに違和感を感じないくらい説得力のある作劇は、実に練られたものだと思う。

メカ物としても異例の魅力で、バーバパパみたいなピンクの仮想ロボットや単なる球や直方体が画面を縦横に動きまくり、時にどんなアニメロボットよりもカッコよく、時にホラー映画のモンスターよりも恐ろしく描かれるのは、快感だ。

現代世界を見事に消化発展させたリアルなSF設定に、アクション、ホラー、少女の恋、様々な魅力を抱えてシリーズは終盤へと突き進む。どれだけの伏線が回収されるかわからないけど、それを見届けられずにはいられない。そして常におもうのだ。こんな楽しい世界が実現すればいいのに。いや、実現できるかもしれない、と。

しかしメガネを使った拡張現実って、技術素人にもレイテンシーはどうなってんの? とか思うけど、実際どうなのかね。コンピューティング能力は発達して高度な画像処理ができても、帯域幅とかストレージがボトルネックになりそう。

あ、罪滅ぼしにDVD1巻も買いました。ネットで観たぶんはぜんぶメディア買いますゆるしてください。