幻想鰻

電車で一時間かけて蒲田まで遊びに行く途中なんだけど、ヒマなんで鰻の蒲焼(うな重)を想像してみる。きょうは食べられそうもないから。
箸にとって口に近付けると、熱気の上に爽やかな山椒の香りがすーっと鼻に入る。口に入れる。ほくっ。甘い。たれの濃密な味。でも先の山椒と焦げた香りが、しつこさを抑えて素直に味を楽しませてくれる。粘りのある米を越えて、白身がサクッと割れ、ほろほろと口に広がってゆく。芳ばしい皮は薄く、けれど確な歯応えを持って、ふつっ、ふつっ、と噛み切れる。泥味はよく焼かれて深いコクとなり、なめらかな白身から染みだし甘いたれと一体となり、更に米へと溶けてゆく。柔らかな小骨は繊維のように米に入り込み、ほどよい刺激となって口を飽きさせない。
まあこんな鰻が食べてみたいものです。