不定期連載:スタートレック渋いおやじ列伝 ピカード編

gasoline2002-11-11

 中学生の頃だったか、友人の熊坂たちと『渋いおやじ軍団』を勝手に編成して盛りあがっていたことがあった。史上の為政者や軍人、現代の政治家やフィクションのヒーローなど、要は渋ければ誰でも列挙していくものである。記憶が判然としないが、いつも山本五十六星野仙一は入っていたような気がする。

 そんなわけで、スタートレックTNG以降)の渋いおやじ達を列挙してみようと思う。どんなワケだ言ってみろっ。ボカッ! あっ!


 何はともあれ、彼無しにスタートレックの、いや全米映画・テレビ界の渋いおやじは語れない、パトリック スチュワート演じるジャンリュック ピカードである。1988年、業界ではイロモノと見なされるSFシリーズの主人公として登場した彼であるが、その演技力と魅力が認知されるに至って、“ハゲでもセクシー”という概念が確立された(ショーン コネリーはハゲる前からセクシーだったので例外である)。彼がいなければERのアンソニー エドワーズも今ごろタダのハゲだった。

 彼の魅力はハゲだけではない。そのバリトンの美声と厳しい視線に3秒で落とされたおやじマニアは後を断たない。通称ゴリラ落としのピカードである。由緒正しきロイヤル・シェイクスピア劇団で鍛えられた発声と黒く深い瞳は、7年続いた番組の前半では孤高の冒険者の、後半では厳格な父性の象徴として働いた。

 彼の弱点は女と子供とアンドロイド。女性関係では同僚のビバリー(未亡人)とのギクシャクした人間関係が7年をかけて変化して行くのも見物だが、やはり部下の母親ラクサナ・トロイとの掛け合いが最高だ。年増で我侭でお喋りな上にテレパスという彼女に迫られ、心の中を読まれて、うろたえるピカードの表情は絶妙。アンドロイド・データのお喋りに撒き込まれた時の彼の渋面も同様である。ただ、感情を持たず人間に憧れるデータを後ろから見守る時のピカードの温かな表情も忘れてはならない。

 日本語吹替え版は最初の52話までを吉水慶、それ以降を麦人がアテているが、個人的には第2シーズンでの吉水慶の演技を推したい。ダンディとはまさにこの事だ、的なバリトンが楽しめる。麦人の声は老成した軟らかさがあり、スチュワート自身の視線の演技の変化とあいまって、こちらも好感度は高い。

 見所としては宇宙艦の艦長としての指揮ぶりが観られる63話『亡霊戦艦エンタープライズC』や68話『孤独な放浪者』、敵に拉致され冷酷な機械へと変えられてしまう74-75話『浮遊機械都市ボーグ 前後編』、そしてエミー賞にノミネートされた感動のSF中篇125話『超時空惑星カターン』などを挙げよう。

 また、個性豊かなゲストキャラとの掛け合いも忘れてはならない。61話『DEJA Q』、94話『QPID』、72話『愛無き関係』などだ。尚、マニアには敵に捕まり全裸で拷問を受けなおかつそれを幼女に凝視されるが人間の尊厳を失うまいと必至に歯を食いしばるという凄まじいマニアック設定が楽しめる136-137話『戦闘種族カーデシア人 前後編』がある。2002年11月現在DVDは第3シーズンまで発売中、前後編はレンタルビデオで楽しめる。