食い意地日記:和食の和いずこなり編 / 遥かなりタイの夜風編

訳あって最近新装オープンした某ホテルの朝食券を頂いたので、徹夜明けで空腹の体で行ってみた。

選べるレストランは6軒もあるのだが、そのうちはと言えば24時間営業のピザ屋だとかインターネットカフェ(なんじゃそりゃ)だとかで、まああまり味に拘れるもので無いことは承知の上。だいたいコンチネンタルだとかは、パンの焼き方程度の差はあれホテルによってそう味が変わるものでもないだろう。そんなわけで味より量、頭はヴァイキングで一色だったところ、直前に某所より「あまりに悲惨な味」との情報が入り足が止まった。妥協のすえ、和定食と書かれた店へ。

店内は柱がないこともあって非常に広く感じる、ファミレススタイル。しかしそれでも中高年を中心に列ができていて、10分程度待った。席につく「和定食」と「朝粥定食」のうちひとつを選ぶ。ほどなくしてつきだし(朝食でもこう言うのかな?)の梅干が出てきたが、直後にメインを載せた角盆も来た。梅干で唾液を出して胃の準備をしようという配慮なのはわかるけど、あんまり意味ないような。

そして盆の上を見る。ご飯、味噌汁、焼いた塩鮭、がんもどきの煮物、温泉卵、のり、香の物。さて、これがホテルの朝食、つまりは最大公約数的な日本の朝食か。まいったな。しょっぱいものばかりじゃないか。個人的に、きちんと出された膳でご飯をおかわりするのはしたくない。なにか自分の食べ方のバランスが良くないような気がして、多少の敗北感を感じるのだ。しかし、この塩鮭の大ぶりさはどうだ。温泉卵もだし汁につかってるし、香の物はたくあん。ご飯もいちおう大ぶりの碗に入っているものの、ちゃんと最後まで持たせることができるだろうか?

まず、梅干とたくあんを切ることにする。もともと漬物類が好きでないわけだし、食べきる上でどこに組み込まれるべきなのか判然としないのだ。一通り食べ終わったあとで漬物とお茶で〆るというのもアリだろうけど、やはり最後の最後までしょっぱい物で終わらせるのはイヤだ。

味噌汁に口をつける。白味噌。流石にインスタントということはないが、まあ大量に作ってあるわけで、少々薄いような気がする。具も印象に残らない程度。鮭はちゃんとしょっぱくて嬉しい。少し前までスーパーで主流だった減塩甘口は廃れたか。皮まで食べたかったが、あまりパリッとしてなかったし、そこまでしょっぱい物食べたらご飯が進みすぎると思い泣く泣く止めた。大根おろしがつけあわされているので、しょっぱさを巧く丸め込んで食べられる。

がんもどき(飛竜頭っての? 正式名称知らん)は、意外に“す”が殆ど入っていなくてまるでゼラチンのようにぷるぷる、噛まずとも舌の上で崩れる。ひょっとして別種の食べ物なのだろうか? いやこれは初めて食べるがんもどきで美味しい。が、噛んだとき“す”からにじみ出る汁が大好きなので、それが無いのはちょっと惜しい。

のりは思案して、塩鮭といっしょにご飯をくるんで食べることにした。醤油は使いたくなかったし。しかし両隣に座っている中年を見ると、のりに醤油をべったりつけるのは無論のこと、塩鮭の大根おろしにも醤油をたんまりたらしてある。このなんでもかんでも醤油で食べる食文化は、韓国人がなんでもかんでもキムチで食べたりインド人がなんでもかんでもカレーで食べたりするのに共通するグロテスクさだ。まあ韓国人やインド人が実際そうしてるとも思えないが。和食は素材の味を大切になんてのは、庶民の食事としてはまあウソに近いわな。

わからないのが温泉卵という存在。いつのまにこんなメジャーな和食になったのだろうか。いちばん解らないのがその食べ方である。とろける生の黄身は、箸で食べられるものなのか? 四角い器のカドから流し込むように食べたが、マナー違反ではないのだろうか。ちょっと周りが気になるところだ。いや美味しい料理だと思うんだが、ご飯とあわない。黄身のコクはご飯でカヴァーできるのではなく、ご飯をカヴァーするものだから(たまごかけご飯として、ね)。口の中で中途半端にご飯と黄身がねっとり交じり合うのは、正直不味い。そこで黄身を食べた後に塩鮭を食べる。すると、お互いのコクとしょっぱさがちょうど言い具合に打ち消しあって、すっきりとする。

こうして箸を進めた結果、ご飯がみかけより分量があったことも幸いして、きっちりおかずとご飯を同時に終わらせることができた。こう食べきったことに、満足感が溢れる。が、よく考えると思想的に実に歪んだ食べ方をしたのだった。とほほ、インチキグルメ。



これとは別に、少し前にタイ料理を御馳走になった。海に面したテラス席で、訪れる夏を実感しながらタイ食である。げへへ。うまいぞ。

前菜で頼んだ生春巻きにびっくり。皮のライスペーパーが物凄く厚いのだ。ほとんどモチのように、むにゅっとした食感があり、やはり多少臭い。本国では厚いという話も少し聞いたことがあるが、どうなんだろう。いや、ヴェトナムとタイでは厚さが違うとか。よく考えたら「タイ」で生春巻きというのは食べたこと無かったな。中身は五目だった。

大ヒットだったのがグリーンカレー。キチンと外国人(=白人とか日本人)の舌にあわせた、まろやかなグリーンカレーで、大ぶりのナスが入っている。このナスが味が染みていて美味い! あとは揚げた魚のあんかけ(よくあるヤツね)も十分美味しかった。流石にキチンとしたレストランだけあって、こないだランチで食べたところよりぜーんぜん美味しかったですわ。コップンカッ。


  • 朝上記の通り。
  • 昼メロンパン。
  • 夜スパゲティ。チンゲン菜。