瀋陽日本総領事館アレコレ

あっはっはー。面白い展開になってきましたな。右っぽい日本主観に多少左な見解を混ぜていけばこうなります。

某お嬢様学園のクラスでいちばんの美人でお金持ちで勉強もできてクラス委員だけどちょっと内向的で実はボケ気味のさくらさんは、クラスメイトのむくげちゃんとぼたんさんに何かあるたびにいつも苛められちゃうおんなのコ。ふたりはさくらさんの父親の代に家業を一時買収されちゃったり(その裏では一口でいえないぐらい辛い思いさせたり)して怨みがあるわけで、むくげちゃんはさくらさんを一方的にライバル視して嫌ってるけど、実は内心憧れと親近感以上の何かを抱いてる。姉御肌のぼたんさんも実はさくらさんの事を可愛がってあげたいし、実は見習いたいと思ってるところもたくさんある。だけど、仲良くしようと言い寄ってくるわりに何気に傷つくコトを言ってしまう鈍感なさくらさんに思わずイラだって、ふたりともついついツラく当たってしまうのでした。(この辺はレズビアン・ファンタジーとお考え下さい。あなたが女性でしたらゲイ・ファンタジーとして設定しなおしてください)。 

実のところ苛められちゃうきっかけは、例えそれが言いがかりでも大抵さくらさんにあるんだけど、普段ふたりに一緒になって苛められてるさくらさんが今回たまたま、もくらんちゃん(むくげちゃんの生き別れで、平たく言えばド貧乏な女のコ。むくげちゃんは血の繋がりを認めたくない)とのトラブルに巻き込まれちゃったからさあ大変。もくらんちゃんを姉御肌で守る立場のぼたんさんと、もくらんちゃんとは表面上敵対するむくげちゃんとの間で、さあさくらさんアナタのこといつも苛めてたけど、ホントはどっちの味方するのよっ! で、オロオロするさくらさん。

……というストーリーを考えてたらあら不思議、今回むくげちゃんは遠巻きに見守って、なんとさくらさんがぼたんさんに半泣きになって噛みつくという展開。ホントは喧嘩なんかしたくなくて内心どぎまぎのぼたんさんですが、売られた喧嘩は倍返しの姉御肌、あたしは悪くないと大声で反撃し、結局オロオロし始めるも振り上げたこぶしは降ろし様の無いさくらさん……と、こんな展開となっております。やあ文章にしてみると長いな。

で、書いてみましたがこの設定にしてこの展開、実はどっちが悪かった、とか、アレコレあって仲直りした、とか、そういうキチンとした『オチ』は着けようが無いのですな。今までのお話でも着いた試しがないし。要は、「さくらさんが毎回ドジ踏んでむくげちゃんとぼたんさんにあのテこのテで苛められる」というシチュエーションを楽しむ物語なのです。



現実世界に立ちかえってちょっと想像力膨らませてみると、今回ポイントは瀋陽という地方都市(つうかイナカ。もちろん大都市ではあるけどネ)で起こったという点ですな。で、日本の大使館だ政治姿勢だの内情ががマヌケなのとまったく同様に、中国の内情もそれはマヌケなのであります。指揮系統や情報伝達は末端・地方に行けば行くほどそれはルーズになってるのは日本以上。まあ日本の警官より多少は士気は高いでしょうが。で、北京はともかく、まさか瀋陽で駆け込み亡命があるとは日中とも思ってなかったと。

中国の「武装警察」といえばニュースでよく見る暴力的な映像でのみそれを知る日本人としてはすぐにでも射殺されちゃいそうなイメージがあるわけですが、現地に行けばそりゃ普通のおまわりさんで、普通にたちんぼをしてるんです。で、不審者集団が突っ込んできて、ぱっと思いつくのはとりあえずヤツらの進入を防ぐこと。彼らは基本的職務に忠実でした。しかし今まで何の事件も無かったイナカなわけで、頭の中は「事件だ! ひょっとしてテロ!? ウソッ!? 俺やんの!? やべッ止めねェと!!」てな感じでいっぱいいっぱい。領事館内に入ってしまったとかまで頭がまわらない。捕まえてみたら泣き叫ぶ女性で、ありゃりゃなんだかヘンだぞ、と思い始めるんだけど、まだカラダは職務に忠実。

一方の日本の領事館員、出てきたはいいけど、彼の頭の中はもちろん「あちゃーどないしよー。まいったなーこまったなー」がグルグルしてるのみ。暫く経ってどうやら駆け込み亡命だってことが双方ともわかってくるんだけど、警察は中央から『ああいう事態は防げ』と命令されてるのを思い出して、そんな事態を許してしまった素朴な責任感と義憤に駆られて、もはやウィーン条約なんて瑣末事もいいとこに。堂々と「入っていいか?」聞いて、答える領事館員も未だにグルグル状態だから思わず「あー、ええよ」と。こうして、イナカの現場の間の抜けたやり取りが、国どおしのプライドを賭けた争いへと膨らんで行くのでした。

中国側の「連行に感謝した」なんてのも、あれは全然アリかな。日本語で「この件に関しては有難う御座いました」言うのと違って、たった2音節の「謝謝」だけ言うとしたら、日本語で挨拶代わりに「すんません」言うのと同じ感覚で、口に出ちゃうのと違います? で、もちろん現場の警官が自分のミスを取り繕うために「彼は感謝した!」と証言すれば、それはそうなるだろう、と。



まあなんだかんだで、僕的には現場の双方のマヌケさが引き起こしたと思うこの事件、表面的には日中関係に何の変化も無いままいつもどおりウヤムヤの内に忘れられ、北朝鮮一家もいつしか第三国に移されて、終わるでしょう。ただ、ひとつウヤムヤにして欲しくないのは、日本政府の亡命不寛容のポリシーはどうなってゆくのか、と。今回映像のショッキングさと面子潰された勢いで亡命者を引き渡せなんて与野党あげて言ってるが、じゃあこれからもちゃんと引き受けて行くんだな!?

他国の体質や政策が良くなろうと悪くなろうと、こちらに主権も干渉権も無い以上ある程度諦めるしかない。が、自分が主権の一部であるこの国が悪くなるのを許すには、諦めがたいものがあるな。