ボストン・リーガル シーズン2 16話「愛ゆえの殺人」

民事法廷中心の『アリー・マクビール』、刑事中心の『ザ・プラクティス』を継ぐ、ディビッド・ケリーのボストン法廷シリーズ第3弾。大手の企業弁護士事務所を舞台にして、アリーのような大胆なコメディ描写と恋愛ドラマは控えめにしつつも、ベテラン俳優を揃えて巧妙でコミカルな弁護士ドラマを繰り広げる。舞台が大手だけに大規模企業訴訟が中心かと思いきや、結局アリーやプラクティスのような個人訴訟ネタがほとんどで、そこは差別化ができておらず残念なところ。企業弁護じゃコメディにもドラマにもしづらかったんだろう。しかしそれでも訴訟ドラマを20年間引っ張ってきたケリーのシナリオ・演出は巧みで、毎回芯のあるドラマが観られる。法廷中はクイックなズームでスピード感とインパクトを出したカメラワークも面白い。

たとえば今回のエピソードは、レギュラーでありながら出番の少なかった事務所の重鎮をメインに置いて、3つのプロットを進ませる。メインプロットは、重鎮弁護士の勘当した娘との再会、法廷プロットは末期医療での安楽殺人裁判、コミックリリーフプロットとして、同じく重鎮女性弁護士の別れた男の再婚話。いずれも、「家族の愛のかたち」をテーマにして、一貫性がある。特にメインプロットのエンディングは、プラクティスを思わせる冷たい印象のフィルターをかけた超ロング撮影で、家族の再生を印象深く映す。異色な演出で面白かった。最後にちょっとした裏切りもあり、単なるハートウォーミングな物語の集合体で終わらせない。これがケリーのドラマだ。

このシリーズ、スタートレックファンにもうれしい作品だ。TOSのカーク船長とDS9のオドーが、パジャマみたいなスーツや特殊メイクを取り去り、本来の人間としての演技で、生き生きとセリフの掛け合いをやってくれる。たまーにスタトレパロディのネタが出てきたりもする。カーク船長役のデニーの携帯の着信音がTOSコミュニケーターだったり、クリンゴンて単語に過剰に反応したり。


FOXもAXNもスーパードラマTVも、はやくハイビジョン化しねえかなあ。夏にはなるって聞いてるんで楽しみなんだけど。ギャラクティカの第2シーズンはハイビジョンで楽しみたいよ。