英語でいまだに概念を掴みかねてる単語が、integrity だ。
辞書を引くと、まず道徳的な意義で、という前置きがあって、高潔さ、誠実さ、堅固な正直さという意味がくる。いまの都知事の四男問題(何人子供おるんじゃしかも男ばっかり)でも、法的にどうかでなく、政治家としての integrity が危ういのだと、どっかのブログで読んだ。テレビでも、政治ドラマや法廷ドラマでよく聞く単語だ。

ところが次にこの語を良く聞くのが、SFドラマや、テクノロジー業界だったりする。ここでの語義は「高潔さ」じゃあない。
むしろ最初に integration という言葉を聞いたときは、「統合する」と理解したから、たとえばICチップの "IC" は、"integrated circuit" で、訳は「集積回路」だと聞いても、なんとなくわかりはする。機能が統合されて自己完結した回路なんだろうな、と。でもこの単語が、ナチュラルに「高潔さ」という意味を同居させる integrity に繋がるかというと、なんとなく理解できるようなできないような、微妙な違和感がのこる。完全に統合されてる、すなわち欠点がなく、よって清廉高潔である、と? うーん。あとデータの「整合性」と言ったときも、integrity が出てくることがあるな。

スタートレックエンタープライズ号が受けたダメージを報告するときに必ず聞こえる "Hull integrity" は、「船体強度」と訳される。
強度。はて、訳としては他に訳しようのない適訳だと思うけど、よく考えると難しい表現だ。"Hull integrity down to 80%" といったとき、それが「あと80%の衝撃で船体がバラバラになる(逆に言えば船体強度1%まで、船としての機能・形状は維持してる)」のか、「すでに20%の船体が破損している(つまり船体強度50%になれば、十分“大破”レベル)」なのか、僕はよくわかってない。

「政治的な高潔さ」から「船体強度」までがひとつの言葉のなかにあっても、日本語ではうまく概念を咀嚼できない。たとえば have は、使ってるうちに「持つ」や「食べる」や「誰かに何々させる」や「完了形」の意味が、だんだん一体化して、ひとつの概念として受け入れられたのに、integrity はそれができない。つまるところ、integrity が統合できないのだ。よしウマいこと言った俺!!