どっと疲れる。

久々に、深刻に気が振れてしまった人に遭ってしまった。

その出発点が何処にあったのかは知らないが、『ビジネス』というものが彼を堕とし、彼の怒りを育んでいったことに間違いはない。なぜなら一見たわごとに見える彼のことばには、情報を集め、独自の発想でチャンスを見出だし、人脈によって人材を集め投資をするという当たり前のプロセスがきちんと含まれていたからだ。

それを感じとってしまえば、「日立の網膜チップを使えばOCRの認識力が良くなりデータを使って温泉を200人で掘り月2千万でランニングする」とか、「社長と同郷だから弁護士を2000人集めてそのうち500人が国会議員になるから警察も盗聴できない」とか、まるでギャグのような狂言に、身を切られるような哀しみを感じてしまう。

彼は彼の方法で情報収集をし、彼独自の発想で勝機を見つけたと信じ、彼の可能だと思う最大限の範囲で人材と資材と投資を集めようとしている。ただ、ヒジネスというものの持つ冷酷さが、彼を一歩あらぬ方向に追いやり、あとは彼自身が自らをここまで追いつめてしまっただけではないのか。いまの僕にはそう見えてしまう。彼が九州の片田舎の畳の上で、脂ぎった足を掻きながら、日経新聞東洋経済夕刊フジをいっしょくたに、ギラギラした目で熟読している姿が、勝手に想像されてしまう。

精神は伝染する、とはよく言ったもので、実際僕は傍観者であっただけなのに、ひどく憔悴してしまった。彼自身のなかに渦巻く行き場のない焦燥感は、いかばかりだろいか。

 

そして我が家に着くと、きょうもふとんがないのである。ぎゃふん。