この「鱒」という漢字が、いまだになじめない。字が文章に出てくると……えっとなんて読むんだっけ、タル? そんな魚いないか。あ、井伏鱒二の鱒だからマスか……などと考えてしまう。ぼくは、マスというと子供のころ父親のヒトが釣ってきたニジマスや、それが可愛く漫画化されたキャラクターを思い出してしまう。その実体と、鱒というどっしりとふてぶてしい字面がつながらないんだ。まあたしかに川魚としてはそうとう大きなものだろうけど、その生態からくるイメージは、もっと美しいものであるようなきがする。