世界でいちばん失礼 -The Most Vicious Race in the Univerce-

オークランドにはまざまな民族背景を持ったひとびとがいますが、友人の某さんによると、日本人は世界でいちばん失礼な民族なのだそうです。



例えば大学のレクチャーにちょっとヒゲをはやしたガイジンの生徒がいる。そのレクチャーに日本人ふたりが入って彼を確認した瞬間、彼・彼女らはあさっての方角を見ながら日本語で「あ! ヒゲや!」「ほんまやヒゲや」「ヒゲこないだもこの席座っとったで」「あかんなヒゲそこはワシの席やちゅうねん」「ヒゲ授業中手ェ挙げて喋んねんコイツ」「ウザいでヒゲぇ」 喋りながら堂々と彼の隣の席につく。当のヒゲは日本語で自分の事を言われていようとは、知る由も無いのである。これは確かに失礼だ。

しかしまあ、そんな感じで日本人はガイジンにどんどん名前をつけてゆく。例えば小柄でぽっちゃりした中国系おばさん講師は「ダルマ先生」。これなんかまだ可愛げのあるほうで、たまたま最初に会ったときシルバーのジャケット着ていた香港人は「宇宙人」。冬でもTシャツな白人は「Tシャツ」、化粧が濃い韓国人には「化粧」、フィジー生まれなら「フィジー」ハゲてたら「ハゲ」ゲイなら「ゲイ」。更にひどいのは、ちょっと日焼けした白人に「黒人」。これ聞いたときはさすがにビビった。名前のつけ方は基本的に第一印象のみで、なんのヒネリもない。

いやこれ、失礼とはわかっていてもついついやっちゃいますよね。日本人どうしでもほら声に出さないだけでやるでしょ。「こいつ香川出身か。……うどん。オマエはうどんや」。ね? そう思って某さんはクラスメイトの韓国人や台湾人に聞いてみた。「おまえらも俺らのいないところで色々名前つけて楽しんでるんやろ?」 しかし答えは揃って「まさか! そんなひどいこと絶対やんないよ!」 ……なんということだ。彼らはみんな純真な心の持ち主で、こんな失礼な事をしかも反射的といって良いナチュラルさで日本人がやっていようとは、想像すら出来なかったのである。彼らの心のなんと清らかなことよ! それに比べて日本人の心は、なんと醜く汚れ切った事か。

そんな話を某さんたちとしながら大学図書館を歩いていたら、彼らは誰か知り合いを見つけたらしく「あ! オカムラさんや!」「ほんまやオカムラさん。久しぶりやなあ」。ところが僕の知らない日本人かと思って周りを見回しても、ガイジンしかいない。 誰? 彼らは正面を見ながら「右のほう歩いてくる」と答える。見ればそこには背の低い目のきょろっとした冴えない白人。ナインティナインの岡村そっくりだった。



絶望的に失礼な民族なのです。